理由は簡単。発電のためだ。ダム発電は中国では民間なので金にならない治水はやらないということだ。干ばつ期に水がなく、洪水期は超大洪水。もう少し頭が使えないものかなあ。これでは下流域では飲料水にも農業用水にも安定的に使えないだろう。この三峡ダムの上流にも大型ダムがいくかある。小生知るところ3つで、一つは紫坪埔ダムとして完成している。このダムは四川大地震のときダム本体にひびが入り、人民解放軍が2000人出動し緊急修理という一報があったきり以後完全に報道規制。その後かなりの期間、軍による立ち入り規制があったからけっこう重傷だった可能性がある。山岳地帯の大型ダム建設は勾配、落差による水力発電には有用であるが、負の影響もまた多い。ダムがいくつもできると、本来の高低差が緩和される。河川水の流速が低下するのだ。これは即、河川の浄化機能を低下させる。土砂が流れにくくなり、堆積しやすくなる。汚染ゴミ、汚染物質も同様だ。ダム湖は必然的にそれらの溜池となる。三峡ダムより上流には重慶という大都市がある。周辺重化学工業が発展している。四川周辺も核関連施設が集中している。この都市ゴミの処理はほとんど手つかずで、郊外に廃棄放置。ここは生ゴミの腐敗異臭と,流れ出した重金属や化学汚染物質がどす黒く溜め池をつくっている。工場は廃液垂れ流し。核関連施設もどこまで安全処理をしているか信頼はできない。これら工場の排水路はいわゆる支流で、排水時は赤や黄色の汚染廃液は長江流入時にはとりあえず色は消えている。多雨期になると、これらのゴミや汚染物質がきれいに全部長江に流れ込む。三峡ダム湖内には3mをこえる生活ゴミが湖面を覆い尽くし、水質は大腸菌からカドミウム、水銀、セシウムなんでもありだという。これではもはや飲料水には使えない。長江下流域全域にわたり米がカドミウム汚染とはこういうことか。ダムは水不足の解消には役立たずということが証明されたというわけだ。
一方で中国はメコン川を黄河、長江とほぼ平行するように流そうと狙っている。中国はメコン川の源流を押さえるため、チベットの支配強化に注力しているが、強引に流れを変えれば流域のラオスやタイ、ベトナムなどの反発が強まるだけにこれは難しいだろう。ベトナムは反中の色を鮮明にし、タイは米軍と大規模な軍事演習を行うなど、中国を牽制している。しかし上流では強引にダム建設を進めているようで今後大きな火種となりそうだ。
現在中国では、水不足対策として2つの大型プロジェクトがある。ひとつは渤海から新疆ウィグル自治区まで海水を引き込むというもので、何十年先か、まずこの実現はないだろう。もう一つが南水北調プロジェクトで、西線、中央線、東線と3つのルートがあり、中央ルートが進行中、東ルートは来年中には北京まで全通するという。だが水が来たというのとその水が飲めるか使えるかというのは別の問題だ。何千㎞という距離を汚染物質を流入させながら流れてきた水は、まさに超超汚染水。まず飲料には使えまい。中央ルートはまだ全通はだいぶ先であろうが、全通時には同様にかなり汚染されている可能性が高い。西ルートはまだ計画段階だ。この計画は、長江の水を分水するわけで本流の流量減水が河口の海水進出や大きな環境の激変悪化をもたらすのは確実だ。だが、中国がその点を考慮しているようには思えない。現状でも水が不足気味の長江は、水運が水深不足のため、航路や航行が制限される等、今後ますます深刻な影響がでてくるだろう。
さて黄河の水不足はどうだろう。前回ブログ水汚染の項で黄河断流にふれたが、ここでは水不足の観点からの考察だ。もともと中国北部は、降雨量が少ないうえに、近年の気候温暖化の影響で、水源の青海高原の氷河・凍土が溶け、湖沼が干上がり、砂漠化が進み、水不足が深刻になって80年代には黄河に断流現象が起こるようになった。黄河は流砂量が多く、上流の土壌浸食、下流の河床の上昇のため、降水期には洪水を起しやすい。古代から、洪水のもたらす黄砂が豊かな穀倉地帯を生み、流域にある河北省、河南省、山東省の農業を育てた。ところが水不足のため灌漑水が得られず、近年は小麦など水を使う作物の栽培は困難になりつつある。水不足は、流域の都市化や工業化、水多消費型の農業など需要サイドの要因も大きく、この改善が進まない中では、解消できるみこみは100%ないだろう。
水の不足は、水はあるのに飲めなくしてしまう汚染が原因という不足が中国全土で頻発している。各地の井戸、地下水の検査で重度の汚染が発見されて使えないのだ。大規模な例をあげる。長江デルタ地帯にある太湖は中国で3番目に大きな湖で、名所旧跡にめぐまれた風光明媚な湖である。太湖周辺は淡水魚と農産物に恵まれ「魚米の郷」といわれている。太湖は周辺都市の無錫、常州、蘇州、上海に飲料水を供給している。ところがこの20年、太湖周辺の工業開発と宅地開発のため、それぞれの排水が大量に太湖に流れこみ、太湖の汚染と冨栄養化を招いた。2007年5月、太湖にアオコが大量発生し、太湖の水は飲料水として使えなくなった。政府は、太湖を汚染ワースト3の湖沼に指定し「三湖水質汚染対策計画」を策定し、対策を進めているがいまだ改善されていない。各地、湖沼によってはアオコだけでなく、アオイホタテが水面を覆い尽くしてしまうような惨状で当然飲用には使えない。渤海においては、河川の流量不足から有機肥料の濃度が高くなって、河口流域が富栄養化し、毎年海岸が何㎞にも渡ってアオコに覆われる現象が当たり前のように見られるようになっている。
しかし、国民にとって危機的状況にもかかわらずどうも中国政府の対応はにぶい。もはや八方ふさがりだと思うが、なんとかならないのかねー。黄河では干ばつが続き、わずかな湖沼が富栄養化でアオコだらけなんていってると、6月には集中豪雨で天井川黄河は大洪水、きれいさっぱり押し流してしまうので表向きこれで解決。それで終わりだ。長江もまったく同様、中南部地域は亜熱帯気候であるから乾季雨季がある。5月頃までが乾季で6月となると豪雨の季節となる。四川省など、この時期は毎年大洪水だ。7月にかけて三峡ダム周辺の河川は最大流量となり表面上は何もかもきれいに押し流されて終わり。毎年これの繰り返しだから改善は無理。100年たってもこのまんま。
ところで、この稿のテーマは日中戦争と~である。なぜと思われる方もおられよう。実はシリーズ最初から読んでいただければわかると思うが、日中、日韓戦争は2015年を極限として耐えるというのが安倍イズムの戦略である。その間に、中国、韓国いずれかが破綻、崩壊するというシミュレーションをしているのである。確定事実を積み上げていくので実戦的シミュレーションといえる。では大気汚染、水不足、水汚染がどのように関係しているのか考察してみよう。
大気汚染による死者180万人。中国の発表だから実際はもっと多いだろう。日本ではこんな数字はありえない。5人も死ねば国がひっくり返るような大騒ぎをして対策をとるだろう。1人の死者の裏には10人の重傷者、その裏には100人の病人あるいは予備軍がいる。死者180万人の裏には1800万人の重傷者、1億8000万人の病気予備軍がいるということだ。空気も水も食べ物もどんなに汚染されていても必要不可欠だ。そして皆平等にリスクを負うのだ。水不足による干ばつ、飢饉では1000万単位での餓死者が出る。水汚染による影響は、野菜の重金属汚染に顕著にあらわれ、人間には重金属や放射性物質汚染の蓄積が奇形となってあらわれている。集団奇形の村がいくつもあるということが漏れ伝わってくる。もはや隠蔽できないレベルになっているのは間違いない。大学病院に奇形標本が数千体なんて噂の陰には何万、何十万という奇形が発生しているのだろう。水や大気の汚染、つまり有機、無機、化学物質、放射能等の汚染で即死することはない。ただし永年に渡って体内に蓄積し10年、20年後に発症する。その場合はまずだめだ。遺伝子異常は世代を超えて影響を与え続ける。このような公害が表に出てきたときはもはや手遅れだ。中国は今ここにさしかかっている。
また文化大革命のスローガン「人は必ずや天に勝つ」なんて台詞は、不遜にして傲慢すぎるだけでなく、狂っている。日本人は自然の偉大さを恐れ、敬い、逆らわず共存してきた。
しかし中国が現在進めている施策、工事にはみじんもそのような謙虚さはみられない。
その人為的危険性を考察する。まず、その最たるものは三峡ダムだ。汚染問題は最悪の事態に至るまでにある程度のスパンがあると述べたが、決壊にはそれがない。いきなりだ。まず巨大すぎる。巨大重量による圧力に基盤が何年耐えられるか。強圧化のコンクリート、岩盤への浸水は想像を絶する速度で進行する。万一想定外の事故の時、たとえばダム本体がひびわれ漏水のとき修理は不能。強制的に全力排水しながらダム本体を爆破しなければならないがまず無理だ。放置して自然決壊を待つしかないだろう。このダムは重量式だが一見頑丈そうに見えて実は大いなる弱点を抱えている。自然水圧、つまり静かな水の平行圧力に対してはめっぽう強いが、オーバーフローと地震の揺れに対しては逆にめっぽう弱い。1975年、淮河(中国第三の河)流域では50カ所のダムが相次いで決壊し、23万人が死亡する事故が発生した。これは人類歴史上最悪のダム決壊災害となった。そこで、ダム自身の安全を図るため、いま、当局は雨期に貯水しないよう呼びかけている。これらのダムはみな重量式であった。一つのダムの決壊が洪水を引き起こし、その圧力とオーバーフローが次から次へと50カ所もの連続決壊を引き起こしたのだ。三峡ダムより上流に稼働中の大型ダムは知るところ2つ。その他工事中はいくつかあるようだ。この山岳地震地帯に大型ダムの建設なんて非常識も甚だしい。先般の四川地震においては震源地から50㎞以上離れている紫坪埔ダムにも亀裂が入る非常事態になって、人民解放軍が緊急出動して修理にあたっているのだ。ダム決壊には大きく2つの要因がある。設計限度を超える圧力がかかるとき、つまりオーバーフローと、ダム本体あるいは周辺が破壊される地震だ。6月期、三峡地区は豪雨の季節だ、貯水量は水位165m最大となる。設計限度は水位175mであるからまだ余裕と思いきや、実は深刻な問題を抱えているのだ。試験貯水開始後水位150mをこえたあたりから、周辺山岳地帯のあちこちで地滑りが頻発するようになり、ついには都市部に及ぶという事態となった。そこで低く抑えざるを得なくなっているのだ。M4程度の地震も頻発するようになった。近年世界温暖化の影響が山峡にも現れて雨量が激増している。豪雨は山岳地帯であるだけに短時間で河川に流入し集中豪雨となる。日本でも米でも最近は異常気象となりつつある。暑さも雨もはんぱではない。台風、ハリケーンは巨大化している。三峡ダムのオーバーフローによる決壊はカウントダウンにはいったといってもいいだろう。また貯水量がピークを迎えるこの時期、巨大水圧を受けているダム本体は、直下型M5程度の地震で決壊の可能性がある。時限装置がいくつもあるのだ。三峡ダム決壊により数十億トンもの水が時速100キロで下流域を襲う。被害は上海にも及び数千万人が被災という大災害となるだろう。山峡ダムは現代のバベルの塔である。
一方で南水北調プロジェクトが進められている。長江からの導水計画3ルートのうち東線は来年にも北京まで全通水しそうだ。そして中央線も数年中にはめどがつくという。東線は長江下流域から導水するため濃縮汚染水となって飲料水として利用できるかどうか、はなはだ疑問だ。また高低差不足から流速を上げるためポンプアップなどで膨大な電力を使うという問題もある。水単価を考えた場合のメリットがどこにあるのかよくわからないプロジェクトだ。中央線の場合は、長江中流に200m規模のダムを建設し、そこから長江の水を分流、自然流下させる計画だ。中国政府はこれを壮大な国家プロジェクトと位置づけている。しかし何か欠けていないだろうか。そう、自然への配慮である。中国の河川はとりあえず古来、東西へ流下している。これを長江中流から分流し、南北へ流そうというのである。大中小、数百の河川をぶった切り横断するのだ。長江が黄河を横切る。黄河の下にトンネルを掘ってサイフォン効果で導水流下させるという。その他様々なテクニックを駆使して北京へ向かって工事は進められている。川と川が交差する。これがどんなに不自然かは馬鹿でもわかる。だがわからない馬鹿が集団で存在する。上下どのように交差させるにせよ、洪水時、南北の河川の氾濫か、東西の河川の氾濫かで流水経路や方向が変わるだけでなく、合流した場合は未曾有の大洪水、惨禍となるだろう。そうなることの方が自然なのだ。2015年が近づいてきた。